二十六、葬頭川ばあさん

「葬頭川ばあさん恐かった  狸の金玉ハ畳敷・・・・・」
 何と言うグロテスクな俗謠であろう。葬頭川ばあさんと言えば泣く子も黙ると聞いているから、余程恐いものの化身に相違ない。
 その葬頭川ばあさんと狸の金玉とが、どういう因縁のあったものかは分らない。その猟奇な婆さんの正体と言うか、偶像と言うか一目見てびっくり! 頭に真綿帽子は殊勝であるが、女だてらの大あぐら、魔性を含んで物凄く柄になく真っ赤に染めた口は逆しまに割れて妖魔を思わせる風体、養報寺の位牌堂の奥深く残されたこの偶像を訪ねる小心者の度肝を抜くかと怪しまれる。

絵

そもそもこのグロテスクの婆さんは、その昔、字橋東と言う地籍 今の役場裏の低地に祠があって、そこに安置されていた事を思うと、たぶん奪衣婆(だつえば)とて、三途の河の畔にて亡者の衣を剥ぎ取る老婆ならん・・・
されば懸衣翁(けんいおう)と共に死者の衣を取り、これを衣領樹(いりょうじゅ)に懸け、その枝垂下する程度によって罪業の軽重を定め、罪科重き亡者に裸形の恥を忍ばせながら大王の前に送ると言う。
いずれにしても妖魔の化身、恐ろし恐ろし桑原々々・・・・・・

 

奪衣婆とは、亡者の衣類をはぎ取る鬼婆。脱衣婆 (鬼) 、葬頭河婆ともいう。
懸衣翁がその衣を衣領樹に掛け、その枝の高低によって罪の軽重を定めるという。

古地図
現地図